定期総会

【定期総会 第2部レポート】話題提供と意見交換会「京都の経済とこれからの企業展望について」

2022/06/24

令和4年度の定期総会が、6月8日(水)に京都リサーチパーク東1号館4階サイエンスホールで開催されました。感染症の影響でここ数年リアルでの開催は見送られていたため、会員同士が顔を合わせての開催は3年ぶりとなりました。

定期総会終了後、続く第2部では、京都府副知事・山下晃正様をお招きし、「京都の経済とこれからの企業展望について」というテーマで話題提供と意見交換を行いました。その内容を要約し、以下にお届けします。

 

 

(講演内容より)

 

ビジョンとそれを実現する企業体質を

 

今回「京都の経済とこれからの企業展望について」という難しいテーマをいただきました。こんな話ができるくらいなら公務員をしていないと思うのですが、本日は話題提供ということで、このテーマについて考える切り口を提示できればと思っています。

さて、これからの企業経営を考えるうえで、おそらく皆さんも毎日のように「こんな企業になりたい」「こんな会社になればこれからも生き残っていける」といったことを考えておられると思います。しかし、私が思うのは、「それがどこまで企業の中で浸透していて、実現可能な企業体質になっているのか」という点が非常に大事だということです。

先日、とある会のパネルディスカッションでコーディネーターを務めた際、パネラーであった京都の旅館「綿善(わたぜん)」のおかみが次のような話をされていました。

綿善では、「人生最後の旅に泊まりたいと思っていただける旅館」というビジョンを掲げ、社員はそのビジョン実現に向けて一緒にがんばる仲間ととらえている。だから、「女将」ではなく「おかみ」とひらがなで表記し、「従業員」という呼び方をやめている。面接でも、ビジョンに対して何ができるか、このビジョンに共感できるかということを一番大事にしている、と。

大事なのは、経営者自身がビジョンを示し、社員と常に対話をし、自らがビジョンにふさわしい行動をしているかどうかです。従業員教育は合わせ鏡のようなもの。経営者の後ろ姿が社員の姿勢に表れていると考えたほうがよいと思います。

 

数字の大切さ、数字には見えないものを感じ取る姿勢

 

「グローカル」という言葉が出て久しいですが、これからの京都を考えた際、この視点はますます重要です。その際、とくに大事にしたいのは、数字で真実を見る姿勢だと思います。

例えば、一人当たりGDPの上位10か国を見ると、大半は人口が少ない国です。中には500万人以下もあります。京都の人口250万人というのは、実は戦いやすい人口なのですね。

また、日本は貿易立国だといわれてきましたが、実はGDPに輸出が占める割合は20%にも満たない。要は、このように、数字で実社会をとらえることで、世界の見方、マーケットのとらえ方が変わってくるということです。

一方で、「デザイン経営」「アート経営」という言葉がしきりに言われているように、これからは数字に表れないエモーショナルな価値がますます重要になってきます。

「冷徹にデータを見ること」。そして、「データに表れないエモーショナルな変化に対して敏感であること」。この2つが、これからのビジネスではますます重要になってくるでしょう。

 

 

コロナ禍を経て見えてきたこと

 

最後に、新型コロナウイルス感染症の影響下で見えてきたことをお話しします。

ひとつは連携の力です。

今回のコロナ禍で、京都府では企業連携を促す補助金を出させていただき、よい取り組みがたくさん生まれました。例として、マシニングセンターの業務をAIで自動化し、そのソフトウェアをサブスクリプションで貸し出す事業に進出した企業がいらっしゃいました。その会社にとっても、京都の企業にとっても、非常によい効果を生んだ事例だと思います。

また、複数の企業のみやげ物をセットにしてEC販売した取り組みでは、そのうちの一企業が、同じみやげ物なのに、別の企業のみやげ物とセットにして販売しただけで、史上最高利益を上げられたそうです。

これが連携の力です。他の事業とコラボすることによって新しい付加価値を生み出すことができるのだと思います。

もうひとつは、オンライン市場やメタバースの拡大です。

先日、北米の方が来られて、「コロナで音楽祭ができなくなったのでバーチャルで音楽祭をやったら120万人の顧客がついた」とおっしゃっていました。「この120万人に対して、京都のものを売りませんか?」という相談だったのです。そういう市場が開けているということ、そして、わざわざ向こうから足を運ばれるようなポジショニングに京都がいるということを、知っておいてほしいと思います。

最後に、これからのサステナビリティ社会を考えたとき、永く続く経営というのは非常に大事です。京都の老舗には、学ぶものが多くあります。例えばそれは「高い倫理観と顧客重視の経営姿勢」「利益よりも存続」「倹約の美学(無借金経営)」「不易流行」といった企業姿勢です。単に売上規模を大きくするだけでなく、社会に永く必要とされる存在は何かを考え、企業の健康寿命を延ばしていただきたいと思います。

 

意見交換会

 

 

後半は意見交換会が行われました。

会場からは

「感染症拡大や、それに続く戦争、物価高と、経営を取り巻くマクロ環境がどんどん悪化する中、普通にしていても経費が億単位で増えてしまっている。何か対策はないか」

「下請けの企業はなかなか価格を上げられない。どうすれば?」

「着物など伝統産業の職人が少なくなり、技術継承が危ぶまれる現状についてどう考えるか」

「『ビジョンが大事』『共感経営』など、いろいろと頭では大事とわかっていても、最初の一歩が踏み出せない」

といった本音の悩み・意見がたくさん挙がりました。

それらに対しては、

「補助や法律はいろいろとある一方で、補助に頼らず、どうすればより付加価値の高い商品を売り出せるのか、ビジネスを再構築する姿勢、今の在り方を見直す姿勢も大事」

「下請けではなく、自らの技術とそれに対する評価を高め、大手から『ぜひ加工をお願いします』とお願いされるように、自らのポジションを高めてほしい」

「伝統産業の技術継承については、もっと世界をみる必要がある。グローバルな富裕層のマーケットは開かれている。そこにアプローチできていないのが問題ではないか」

「経営者自身が夢を描くことが大切。もしそれができないなら、社員に『どんな会社にしたらええやろ?』と聞いて一緒にスタートしたらいい。その場合でも、やはり経営者がいちばん努力して学ぶ姿勢が大事だと思う」

といった応答がありました。

経営者が悩みを本音で語り、本音でぶつかる場というのは、なかなかありません。リアルな開催で互いに意見し、刺激し合える貴重な会になったと思います。話題提供くださった山下副知事、ならびに、ご参加いただいた会員の皆さまに、心より感謝申し上げます。ありがとうございました。