機械・電気

有限会社日双工業

未来をつくる4次元加工の技術者集団

2022/10/03

京都府宇治市で、金属の切削加工、試作品加工などを手がける有限会社日双工業。
2023年に創業70周年を迎える同社では、他社が敬遠するような複雑形状品の加工、小ロットの加工を短納期で実現しています。

とくに、モデリングから加工まで一貫対応する社員の技術力とスピード、そして、どんな相談に対しても、できる方法を提案していく姿勢を強みとし、製品化する前の「試作品」加工や、生産設備の破損部品を復元するなどの「リバースエンジニアリング」において実績ある企業です。

代表取締役・西田裕子さんに、経営者になった経緯や事業で大切にしていることについて、お話いただきました。

有限会社日双工業代表取締役・西田裕子さん

次代の変化に対応

当社の創業は1953年。私の義父である西田覺太郎が「西田製作所」の名で創業したのがおこりです。当時の仕事は、義父の長年の勤め先であった精密機器メーカー・島津製作所の部品製造が、ほぼ100%でした。

やがて、証券会社に勤めていた私の夫・栄一が後を継ぐとき、「時代の変化のなかで、島津製作所一社だけでは、今後やっていけない」と、経営を刷新します。

夫が考えたのは、金型部品製作。金型のなかでも、電話やカメラなどの凹凸や曲線形状を削り出す技術は当時最先端にあり、夫はその金型部品製作に特化して事業化しました。他社に先駆け3次元CAD/CAM、マシニングセンタを導入し、自動車や家電関連製品の金型部品製作を手がけるようになっていきます。

しかし、1990年代には量産工場とともに金型も海外へ。危機感を持った夫は、同業者の仲間と次の時代を考える勉強会を開くなど、模索の時間を重ねました。

そうした中から立ち上がってきたのが、「試作」というキーワードでした。量産は海外に流出しても開発部門は国内に残るのではないかと考え、また大手企業では試作は必要だが負荷が大きいと思われていたようです。

こうした背景の中、京都府や京都産業21にも後押ししていただき、金属加工業の10社が集まり、試作に特化したソリューションサービスを提供するものづくり集団として2001年に「京都試作ネット」が誕生します。そこから徐々に、「こんなものをつくれないか」という問い合わせが入るようになり、仕事の幅が広がってきたんですね。

義父と夫、2人の想いを受け継いで

とはいえ、まだまだ金型部品製作を主として営んでいたのですが、そんななか、夫の栄一が病気で急逝します。2004年のことです。

社員もお客さまもいる手前、事業を継続しなければいけません。再び義父が代表に就任し、社員に支えられて、なんとかやりくりする時代が数年続きました。

しかし、経営状況は少しずつ悪化し、2009年のリーマンショックでどん底に。義父は自社に愛情を持っていましたし、社員もいます。また、これから事業を大きくしていこうとしていた矢先に旅立った夫のことを思うと、「この状態で会社を潰したくない」という思いが先立ちました。

「技術を持った社員と機械があれば、なんとかなるのではなないか」と、2011年に代表取締役に就任したのです。

いま思うと、技術も経営もわからない私が代表になるのは、半分は私のエゴだったのかもしれません。しかし、試作ネットの参画企業である(株)最上インクスさんやHILLTOP(株)さんが、財務面や営業など「教えてあげよう」と助けてくださいました。

いまでもそうですが、本当に大変なときに「どんな状況や?」と声をかけてくださる先輩経営者の皆さんがいるのは、夫が遺してくれたうちの会社の宝だと思っています。

多様な業界に広がる、複雑形状加工の技術

現在では、金型部品加工時代から培ってきた複雑な3次元形状加工術を生かして、多岐にわたる業界の産業用機械部品を手がけています。

強みは、「どこからどう加工していけばいいのかわからない」ような複雑な形状のものをつくる技術。反対に、汎用機で手早く対応したり、量産するものづくりは、うちには向きません(笑)。

「こういうものをつくれないか?」という相談から始まり、納品すると「ほんまにつくれるんや」と言われたことも。上から加工するのか、下から加工するのか、どのように機械にセットしていくのか。それを考えて実現できる技術者になるのは、最低でも5年は必要。弊社では、そうした高度な技術を要する部品製造を約2週間という短期で納品しています。

複雑な形状を得意とする同社の加工事例。5軸加工機を駆使した20方向からの加工を、途中1回の掴み替えで実現した。
第2回・第3回切削加工ドリームコンテスト受賞作品。同社は試作部品加工が多く、守秘義務上、実績を表に出せないものが多い。実績以外で技術力をアピールする必要からコンテストに挑戦しており、毎年のように受賞を重ねている。
生花をスキャンしてデータを起こし、花びら3部品、葉、茎に分けて加工し組み上げたバラのオブジェ。

いろいろな相談がきますが、どんな相談でも断らず、できる方法を考えて、お客さまの事業に貢献するように努力することは、弊社が常々大事にしていることです。

「未来をつくる“4次元加工”の技術者集団」というキャッチフレーズにも、その姿勢を表現しました。

試作品という、これから世の中に生まれる「未来の」製品で、お客さまの「未来をつくる」という想い。また、競合他社よりも早く世に出し、お客さまの事業の加速に貢献するという決意を、強みである3次元加工に時間軸を加えた「4次元加工」という言葉に込めています。

ものづくりの楽しさや働きがいを感じられる環境を

強みである技術を磨くには、その人がものづくりを本当に好きかどうかに尽きると思っています。「つくることが楽しい」「難しいものをがんばってつくってみたらお客さまに喜んでもらえた」など、つくることによろこびを感じられるかどうか。だからこそ私は、社員がものづくりを楽しめる環境や機会をつくっていきたいと思っています。

そのひとつが、「これ創りたいねん宣言」です。

宣言さえすれば、休み時間や空いた時間に、自分が好きなものを自由につくっていいという制度で、材料費も「年間10万円以内であればリーダーの裁量で自由に購入していい」と伝えています。これまでに、釣りが趣味の従業員がリールのハンドル部分をつくったり、別の従業員が新居を構えた友人にプレゼントする表札をつくったりしています。

自分が好きなものをつくるときには、みんなすごいエネルギーが出るんですよね(笑)。

あと、弊社の仕事は産業用機械部品が主で、しかも開発品となると守秘義務があり、一般の人が弊社の製品を目にする機会が少ないのですが、これからは最終製品に近い仕事も増やしていきたいと思っています。

近年、建築部品や美容器具など、部品加工業者としては一見風変わりな仕事を増やしているのも、そのため。多くの人の目に触れたり、一般の人に自慢できたりするものをつくれることが、社員の励みになるように感じているからです。

産業用機械部品以外での最近の加工事例。サッポロビールや帝国ホテルなどの創設に関わったことで知られる実業家、大倉喜八郎の別邸「蔵春閣」は、出身地である新潟で23年春の一般公開を目指し移築が進んでおり、その扉の「取っ手」の加工を同社で製作した。

オンリーワンの技術で日双にしかできない仕事を

経営者としては、社員が成長することがやはり一番のよろこびです。たとえ、うちの社員が将来に日双工業を離れることがあったとしても、その社員にとって、日双工業にいたことが人生の糧になると思ってもらえるような仕事と環境をつくっていきたいです。

そして、会社としては、「あんたんとこにぜひ頼みたい、日双さんなら安心や」とおっしゃっていただけるような、信頼されるとがった存在を目指していきたいと思っています。

(取材日:2022年8月23日 / 写真提供:有限会社日双工業 / 取材・文 編集事務所coillte立藤慶子

紹介動画

会社概要

社名 有限会社日双工業
本社 〒611-0041 京都府宇治市槇島町目川77-1
事業内容 試作・研究開発支援/一般部品加工/リバースエンジニアリング/ものづくりサポート
設立 1953(昭和28)年5月
従業員数 9名
ホームページ https://nisso-k.co.jp